個人的にはとても楽しめました。
細田守監督が映画を通して伝えたい家族や成長について、引き込まれるような映像の素晴らしさと圧倒的な音楽のクオリティで伝わってきました。
それだけで劇場に足を運ぶ価値があると思います。
(以下、ネタバレあり)
一方でお話自体のクオリティにはいろんな人から指摘というか文句が出てきているみたいで、個人的には「それはイチャモンレベルだなぁ」とか「そこを気にしてたら楽しめないやん」とか「単純に考え方の違いの話」みたいな内容のものが多かったんだけど、ひとつだけ「それは確かになぁ」と思うところがありました。
それは竜の正体を突き止めた後に、主人公の鈴が直接竜を救うために遠路遥々高知から東京まで一人で向かうという部分。
そこまでの流れがとても素晴らしくて、逆にこの展開になった時にギョッとしてしまったんだけど、ここで「直接竜を救いに行く」という展開と「インターネット・
SNSを駆使して直接行かなくても助けられる」という展開が考えられた時に前者の方向に傾いた(そこまでの過程でインターネットによる場所の特定といった流れはあったけど)ところでお話のメッセージとしては「インターネットだけでは本当に人を救うことはできない」という想いがあるのかなと感じました。
例えばベルの影響力を利用して場所を特定できるように呼びかけたりすることもできたはずだけどそういった手段で竜を救うことを良しとしないというか。
そして鈴が直接竜を救いに行き、その姿をかつて見ず知らずの子どもを水難事故から助けた代わりに亡くなってしまった鈴の母親と重ね合わせて鈴の成長を見せる描写もとても綺麗だし、鈴が竜を守るために竜を抱いた時に、Uの世界での経験と重なって竜が鈴のことをベルだと信じられるようになるという件も、まさに「直接竜を救いに行く」という展開だからこそ生まれたもの。
だからこそ「この描写がやりたくて感」があって「女子高生が一人見ず知らずの土地へ向かって
家庭内暴力の被害者を救うために大人の男へ立ち向かう」必要があった、という結論ありきの導線に思えてしまったのが唯一気になりました。
結果的に鈴は軽症で済んだけど、もっとひどい結果になってもおかしくない状況だったし、最終的には竜が「俺も戦うよ」で決着してしまって「本当に大丈夫かよ」って思ったし、むしろ大騒ぎになってご近所さんが通報して逮捕ぐらいの話の方が安心できたような気がしました。
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とはいえその描写自体がすごい綺麗なのである意味しょうがないと言えばしょうがないのかなという気持ちもあります。
その他にもツッコミを入れようと思えば入れられる部分があるとは思うんですけど、作品の本質に関わるという意味ではその部分ぐらいかなと思いました。
あとはもう大満足というか、もう一回映画館行ってもいいぐらいに好きな作品です。
この作品を観終わって少し昔の曲の2番の歌詞を思い出したので貼っておきます。
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"いろいろできるよう なってゆくのに 再現できないのは ぬくもり"