Jリーグが開幕した1993年にサッカー少年だった人たちが大人になって、改めてW杯に初めて出ることになった1998年を振り返るという意味ではこれ以上の本は無いという名著でした。
「6月の軌跡」というのは日本が初めてW杯に出場したフランスW杯のことですが、このW杯があったからこそ日本サッカーが世界との壁を痛感して、選手だけでなく監督やスタッフがそれからどう世界との差を埋めていくべきかの試行錯誤が始まったという意味では歴史上非常に大きなターニングポイントだったんだなと思わされます。
20年という月日がそうさせるのかもしれませんが、当時は知ることができなかったいろんな選手のエピソードが満載で、それだけでも読む価値があります。
個人的に一番印象的だったのは
小野伸二選手の話で、小野選手のことをいろんな人が天才と軽々しく言うけれど、その裏で海外生活でたくさんの努力があったというエピソード。
フェイエノールト時代に習得するのが困難とされている
オランダ語を習得したり、チーム内で流行していたビリヤードを特訓して馴染むみたいな話は個人的には意外でした。
人当たりの良さは知っていたけど、やることはしっかりやってるんだなと。
いろんな海外組の選手に知って欲しい。
あと興味深かったのはW杯でアルゼンチンや
クロアチアと戦った選手たちが、いまだに自分たちのプレイを振り返って「あの時ああしていれば」とか考えたり、「全力でぶつかっていってもびくともしなかった」という世界と戦った経験をいつまでも忘れずに胸に刻んでいたり、やっぱりW杯というのは出場するだけでもその人ののちの人生に多大な影響をもたらしている点。
まさにW杯に出た人にしか味わえない感覚とでもいうんでしょうか。その経験がいろんな場所でまた日本サッカーに還元される、ということを何度も繰り返していって日本は強くなってきたんだなと思いました。